2022/01/09 「主の前で誰一人命を落とさずに」使徒言行録27:39~44 牧師 古屋 治雄

使徒言行録27:39~44
牧師 古屋 治雄

◇パウロが囚人として移送されている船は、大変な嵐に見舞われている。その中で彼は、神様に導かれ、重要な役割を担わされている。彼は「船は失うが、皆さんのうちだれ一人として命を失う者はない」(22節)と言う。船を失うことは、運航する責任者や、積み荷を運ぶことを第一に考える商人たちには考えたくもないことであった。しかしパウロは、天使の言葉により、必ずローマ皇帝の前に進み出ることができる、それは神の必然であると信じていたし、自分だけでなく、乗船している全員が守られることを信じていた。(24節)

◇27節からは、船員たちが乗客を見捨てて逃げ出そうとする危機が起こる。これはパウロの発言と百人隊長らローマ兵の行動で阻止される。「一人の命も失われない」という神様への信頼によって危機を乗り越えることができたのである。この一件でパウロと百人隊長にある意味で信頼が生まれたのかもしれない。39節からは船の座礁という危機が襲う。船はもはや破壊を免れない。皆、泳いで脱出するほかないが、ローマ兵たちは、囚人を逃がすと自分たちが責任を問われるから、殺そうとする。この計画は百人隊長によって阻止され、全員、泳いで上陸を果たすのである。神様は、福音を担う者を助けてくださる。それだけでなく、その者と共にいる運命共同体をも守ってくださるのである。

◇一連のできごとの中で、パウロが皆に食事をとらせていることは、イエス様が群衆に食事を与えられたことを想起させる。人間の力では解決しない問題に対して、冷静さと、生命の祝福の実感を回復させるのである。この船におけるパウロの働きは、福音そのものの力がそこに現れているのである。彼の働きは、この世におけるイエス様の働きと重なっている。イエス様は、現在の私たちの世界(大波に揉まれている船のようなもの)を共に生きてくださる。そしてその一人でさえ生命を失うことをお望みにはならない。否、すでに私たちの生命を救ってくださっている。2022年、この大きな恵みを忘れることなく、救出された私達であることを覚えて、歩んで行きたい。